近年の地球温暖化に伴い、多くのスキー場がシーズン初期(12月頃)の「深刻な雪不足」に悩まされています。 雪が十分に降らない過酷なコンディションの中で、何とか早くオープンさせたい、滑走エリアを広げたいと願うのは、スキー場にとってもお客様にとっても切実な願いです。
しかし、雪が少ない中で無理にパークを造成しようとすると、土や石が露出して滑走者が怪我をするリスクが高まったり、圧雪車のブレードが地面の芝生や土を削り取ってゲレンデを傷めてしまう原因になります。
このような厳しい状況下でこそ光るのが、限られた資源を最大限に活かす「引き算の雪マネジメント」というプロの造成技術です。今回は、わずか10cmの天然雪から安全なアイテムを創り出す知恵を解説します。
小雪のシーズン初期、コースの真ん中には雪が少なくても、実はゲレンデのあちこちに「隠れた雪の資源」が存在します。
プロのビルダーは、ただ降雪を待つのではなく、地形の風向きと太陽の角度(日照条件)を読み解き、「どこに雪が集まり、どこが融けにくいか」を把握します。そして、コース脇の吹き溜まりから必要な分「だけ」を圧雪車で優しくすくい上げ、アイテムの設置エリアへスマートに移動させるのです。
ジャンプ台(キッカー)をすべて雪だけで作ろうとすると、膨大な積雪量が必要になります。例えば、高さ3mのキッカーを作るには、数十トンもの雪が必要です。雪不足の初期にこれをやろうとすれば、コース全体の雪を枯渇させてしまいます。
そこで有効なのが、雪を「引き算」する設計です。
雪が10cmしかない状態で圧雪車を動かすのは、非常に高度な操縦技術を要します。 ブレードを少しでも下げすぎれば、ゲレンデの大切な土壌(芝生)を削ってしまい、来春の自然破壊や、翌シーズン以降のブッシュ(草木)の露出原因を作ってしまいます。
私たちは、ブレードの角度をミリ単位で浮かせる「フローティング操作」を徹底し、雪の「上の層だけ」をなでるように集めて固めます。
「自然がくれた大切な雪資源を、感謝を持ってスマートに分かち合う」